ライチョウの保護対策
2012年にライチョウが近い将来絶滅の危険性の高い絶滅危惧IB類に指定されました。
これを受け、環境省が「ライチョウ保護増殖事業検討委員会」を発足させ、2014年にライチョウ保護増殖計画が作成されました。現在、ライチョウの保護はこの計画に基づいて進められています。その計画は、主に以下の2つの側面から取り組まれています。
- 域内保全:生息現地での保護対策
- 域外保全:動物園で飼育して増やす保護対策
域内保全
生息現地での域内保全策として、現在以下の4つの対策が行われています。
① ケージ保護
「ケージ保護」は現地に設置したケージを使い、孵化直後の雛を雌親と共にケージに収容し、雛が飛べるようになり、自分で体温維持が可能となる孵化1ヶ月後まで、人の手で捕食者や悪天候から守ってやる対策です。
2015年から5年間、最もライチョウの減少が著しい南アルプスの北岳で実施し、この地域の繁殖数を4倍に増やすことに成功し、効果が確認されました。
このケージ保護は、2020年からは絶滅した中央アルプスにライチョウを復活させる事業として現在も引き続き実施されています。
② 捕食者の除去
北岳でのケージ保護と合わせ、2017年からはキツネ・テンの捕獲も実施しており、現在も継続中です。
2020年からは中央アルプス駒ケ岳周辺でも実施しています。
③ 高山帯からのニホンザルの追い払い
2015年8月、北アルプスの東大天井岳で、ニホンザルがライチョウの雛を捕食するのが確認されました。
これを受け、長野県により2016年から2018年の3年間、高山帯からのサルの追い払いが実施されました。
また、2020年には中央アルプスの駒ケ岳で、雛が孵化したばかりの巣をニホンザルが覗いたため、雛が全滅する事件が起きました。そのため、翌2021年からは、環境省と長野県により、駒ケ岳周辺の高山帯からのニホンザルの追い払いが実施されました。
④ イネ科植物の除去
現在最も温暖化の影響を受けている火打山のライチョウを保護するために、採食地に侵入したイネ科植物を人為的に除去する対策です。
2020年から実施しています。
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ライチョウのケージ保護とは?
乗鞍岳での長年のライチョウ研究から、日本のライチョウは孵化後1ヶ月間の死亡率が高く、その原因は孵化時期の梅雨による悪天候とキツネ、テン等による捕食であることがわかりました。
そのため、ライチョウの生息する高山にケージを設置し、孵化したばかりの雛を母親と共にケージに収容し、雛が飛べるようになり、自分で体温維持ができるようになるまでの1ヶ月間、人の手で守ってやる方法として考え出された保護対策がケージ保護です。
ケージに収容するといっても、家族をずっとケージに入れておくのではありません。
日中には家族をケージから出し、外で自由に生活させ、夜にはケージに収容し捕食者から守ります。
孵化した雛は、母親からどんなものが食べられ、天敵や悪天候にはどう対処したら良いかといった、厳しい高山で生きるすべを学ばなければならないからです。
一ヵ月間ケージ保護した後には、家族を放鳥します。雛は、自分で体温維持ができるようになり、また十分飛べるようになり、捕食者から身を守ることがきるので、以後死亡することは少なくなります。