野生復帰7雛のうち6羽の生存を確認
動物園で人の手で育てた雛7羽を9月17日から一週間中央アルプス駒ヶ岳で現地の環境に慣らした後、23日に放鳥し野生に戻しました。その7羽のその後の様子を調査するため、9月28日から30日の3日間、駒ケ岳を訪れました。その結果、放鳥ほぼ一週間後に7羽のうち6羽が無事でいることが確認できました。
確認できたのは、大町山岳博物館からの雛5羽(写真1・2)と那須どうぶつ王国からの雛雄1羽(写真3)で、那須どうぶつ王国からの雛2羽のうち、1羽(雌)は今回発見することができませんでした。6羽は、放鳥した頂上山荘裏から500m内で発見されました。
大町山岳博物館からの雛5羽は、放鳥時の5羽のままで、駒ケ岳山頂から馬の背尾根の登山道に沿って3日間とも行動していました。
5羽は人を避けることが無く、人がいるところに寄って来て、訪れた登山者の人気者になっていました(写真2)。人に馴れすぎていて,かえって心配になるほどでした。
一方、那須どうぶつ王国からの雄の雛1羽は、雛4羽を連れた2022年生まれの2歳になる雌(空黄・黄赤)の家族に1羽の雄の雛が加わった群れと共に行動していました(写真4)。
この群れは、駒ケ岳の南西斜面の登山道から離れた場所で、観察された2日間とも行動していました。
今回調査した時期は、高山帯でのチングルマやウラシマツツジなどの草紅葉の紅葉がほぼ終わった時期でした(写真5)。
成鳥の雄(写真6)と雌(写真7)はすっかり秋羽となり、これから冬羽の換羽が始まる時期にあたっていました。これまでの「ピョ、ピョ」の鳴き声から、雄の雛は「グエ―」と聞こえる低い声に声変わりする時期を迎えており、雌親から独立するのはもうすぐです。
現在、中央アルプスには、繁殖個体と今年生まれた雛を合わせ200羽ほどが生息しています。そのほとんどは足環により標識されており、年齢や親子関係等が明らかにされています。
これらの個体の追跡調査は、初雪となる11月初めまで続けますが、今回野生復帰した7羽の雛の他、ケージ保護した3家族、さらにケージ保護しなかった家族も含め、多くの個体が無事に冬を乗り切り、来年の春には繁殖してくれることを願っています。
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