中央アルプス北部地域2024年10月末時点のライチョウ確認状況
2024年10月25日~27日の調査
この10月には、乗鞍岳、火打山、南アルプス仙丈岳のライチョウ調査の他、14日・15日と25日~27日の2回にわたり、宝剣岳以北の中央アルプス北部地域一帯のライチョウの生息状況調査を実施しました。
ここでは、10月末の中央アルプス北部地域の調査の様子と結果の概要を報告いたします。25日~27日の3日間の調査に同行いただいたのは、中央アルプス雷鳥サポーターズクラブの北村忍さんと東京農業大学の学生松本知嬉さんです(写真1)。
例年ですと、この時期は初雪が見られる時期ですが、積雪はまだなく、3日間とも晴の天気でした(写真2)。冬に備えて採食が活発になる時期ですので、晴れの天気にもかかわらず、今回は多くの個体を観察することができました。
3日間で65羽を確認
駒ヶ岳、伊那前岳、木曽前岳,将棋の頭がある中央アルプス北部地域一帯の3日間の調査で、65個体の生息を確認しました。そのうちの9割に当たる59羽(成鳥27羽、今年生まれの雛32羽)は足環つきの個体、残り6羽はまだ未標識の今年生まれた若鳥でした。
推定では、この時期に生息する北部地域一帯での今年繁殖した成鳥と今年生まれた雛の合計は100羽ほどになりますので、その65%ほどを3日間の調査で確認できたことになります。
冬羽への換羽が進み多くは秋群れで生活
冬羽への換羽は、成鳥に比べると今年生まれた雛の方が早く、親から独立した若鳥の中にはすでにほぼ全身白くなっている個体もいました(写真3)。
この時期、多くの個体は繁殖を終えた雌雄に親から独立した若鳥、さらにまだ雛ずれの家族も一緒になった秋群れで生活しています。今回の調査では、駒ヶ岳周辺で最大15羽の秋群れも観察されました。
飛来雌とその雛3羽の生存を確認
今回の調査では、9月下旬以降観察が途絶えていた飛来雌(赤赤・赤赤)の生存が確認されました(写真4)。飛来雌のいた9羽の秋群れの中には、飛来雌の雛3羽も観察され、7月末に放鳥した3羽の雛は3羽とも無事であることが確認されました。
野生復帰した7羽のうち4羽の生存を確認
今年は、長年にわたるライチョウ飼育の最終目標であった人の手で育てたライチョウを山に戻す野生復帰が初めて行われた年です。
那須どうぶつ王国から2羽、大町山岳博物館から5羽の計7羽が、9月中旬に中央アルプス駒ヶ岳に陸送され、現地の環境に一週間慣らした後に放鳥されました。
今回の10月末の調査で、那須どうぶつ王国からの2羽(写真5・6)と大町山岳博物館からの5羽のうち2羽の生存が確認できました。
大町山岳博物館からの5羽は、放鳥後9月末までは駒ヶ岳山頂付近で5羽が一緒に行動していたのですが、今回を含め10月に入ってから観察されたのはそのうちの(黄黄・黒黒 写真7)と(黄黄・黒赤)の2羽です。
今回確認されなかった大町山岳博物館からの3羽は、今回の調査で発見できなかった可能性、捕食などによる死亡、中央アルプス中・南部地域への移動が考えられます。
今回の調査で、南アルプス中・南部地域で標識した雛の何羽かが、北部地域で観察されましたので、大町山岳博物館からの今回確認できなかった3羽は、中央アルプス中・南部地域へ移動した可能性も考えられます。
野生復帰した個体の生存状況は、他の個体と共に今後も引き続き調査してゆきます。
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