環境省の令和5年度ライチョウ保護計画が決まりました
この3月3日に環境省のライチョウ保護増殖検討会が開催され、今年4月からの令和5年度ライチョウ保護増殖計画が決まりましたので、以下にその概要をお知らせします。
2020年度(令和2年度)から始まった第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画は、この3月で3年間の計画が終了し、2024年度(令和6年度)まで残り2年間を残す折り返し点を迎えています。令和5年度(2023年度)の実施計画について、域内保全を中心に紹介します。
1.中央アルプスにおける実施計画
(1)なわばり分布と繁殖個体の足環確認調査
これまでと同様、北部地域と中南部地域に分けて実施します。
- 北部地域(伊那前岳~中岳~駒ヶ岳~木曽前岳、駒ケ岳~将棋の頭)
- 4月下旬~6月上旬
- 中南部地域(宝剣岳~三ノ沢岳~檜尾岳~熊沢岳~空木岳~南駒ケ岳~越百岳)
- 5月下旬~6月下旬
(2)巣探し調査
これまでと同様、ケージ保護を実施する場所近くのなわばりで実施します。
6月中旬~下旬
(3)ケージ保護の実施
6月下旬から~8月上旬
昨年と同様、頂上山荘と天狗荘にそれぞれ3個と2個のケージを設置し、5家族ほどをケージ保護する。
これまで通り、乗鞍岳からクロウスゴ等の餌の搬入、下界からの小松菜等の野菜を搬入し、ケージ保護中の餌の一部として供給する。
(4)雛の生存状況調査と足環による標識
これまでと同様、中央アルプスで繁殖したケージ保護した家族としなかった家族について、孵化から10月に親から独立するまでの間の生存状況を追跡調査し、9月以後には雛を捕獲し足環による標識を実施する。
- 北部地域
- 7月上旬~10月下旬 この間10回程度
- 中南部地域
- 7月上旬~10月下旬 この間4回程度
(5)登山者からの目撃情報の収集
昨年と同様、環境省の目撃情報カード、YAMAPによるライチョウモニター、長野県のアプリ「ライポス」等から情報の収集を行う。
(別ウィンドウで開きます)
(6)センサ―カメラによる捕食者の動向調査
6月~10月
昨年同様、北部地域に12個、中南部地域に10個ほどのセンサーカメラを設置する。
(7)捕食者対策
5月~10月
れまでもキツネ、テンの捕獲を実施してきたが、最近は効率が悪いので、今年度からは従来の筒罠と箱罠の改良、新たな罠(緩衝性足はさみ、足くくり罠、胴くくり罠)の導入により捕獲効率を上げる。
また、誘因効果を上げるため、今年度からはネズミ、モルモットなどの生きた餌を使った捕獲も試みる。さらに、これまでは、宝剣山荘と頂上山荘周辺で捕獲を行っていたが、今年度からは捕獲地域を頂上木曽小屋、玉の窪山荘、西駒山荘、さらに檜尾小屋周辺にも広げる。
(8)サルの追い払いと発信機の装着
6月下旬~8月末
これまでと同様、北部地域一帯からの猿の追い払いを実施する。また、今年度からは新たに黒川の群れに2種類の発信機を装着し、行動の追跡調査と追い払いの効率化を図る。
(9)動物園からの若鳥と成鳥の環境順化のための大ケージの試験設置
今年から新たに実施する事業。2年後の2024年には、動物園で孵化し育てた若鳥と成鳥を9月に駒ケ岳に移送し、環境に順化した後に放鳥することが計画されている。そのための大型ケージの試験設置を今年9月に実施する。
2.南アルプス肩の小屋と北岳山荘周辺における捕食者対策
これまで肩の小屋と北岳山荘周辺で捕食者のキツネ、テンの捕獲を試みてきたが、最近は捕獲効率が落ちているので、従来の筒罠と箱罠の改良、新たな罠(緩衝性足はさみ、足くくり罠、胴くくり罠)の試験的設置により捕獲効率を上げる。
3.火打山におけるイネ科等の除去による採食環境の改善
8月下旬
これまでと同様、火打山でのライチョウの採食環境改善のため、イネ科植物等の除去を実施する。
4.各山岳集団の生息状況モニタリング調査
これまでと同様、下記の山岳において、春のなわばり分布調査と秋の雛の生存状況確認調査を実施する。
実施山岳:
- 火打山・焼山
- 乗鞍岳、焼岳
- 南アルプス白根三山北部地域、仙丈岳
実施内容:
- なわばり分布調査: 5月~7月
- 雛の生存状況確認調査: 8月~10月