2023年のケージ保護が無事終了しました

2023年6月28日から開始された中央アルプス駒ケ岳でのケージ保護は、7月30日までに5家族計28羽の雛を一か月間人の手で守ってやった後に無事放鳥することができ、終了しました。

この間、ケージ保護を手伝っていただきました多くの方に、心よりお礼申し上げます。

ケージ保護終了後も引き続いて放鳥した雛の生存確認調査、乗鞍岳や南アルプス仙丈岳での今年の雛の生存調査に携わっていたため、ケージ保護終了の報告が大変遅くなってしまいました。

那須どうぶつ王国生まれの1歳雌がとった興味深い行動

今年は、ケージ保護した家族を放鳥した後にこれまでに経験したことの無い大変興味深い行動を観察できましたので、報告させていただきます。

それは、昨年那須どうぶつ王国で生まれ、8月にヘリで駒ケ岳に戻された雛が今年1歳となり繁殖し、一か月間ケージ保護された雌が、放鳥後にとった行動です。

その雌は、放鳥後自分の雛の他に、雛の面倒を見なくなった隣でケージ保護された雌の雛6羽も引き受け、計12羽の雛を抱雛する行動です。

その行動を8月6日に動画と写真に撮影することができましたので紹介します。那須どうぶつ王国の1歳雌が隣のケージの雛を受け入れ、面倒を見るようになったのは、放鳥した7月30日の夕方からです。それ以来、頂上山荘に泊まり込み、サルの追い払いをする人達などにより、12羽の雛を抱雛する行動が観察されています。

私がその抱雛を観察したのは8月3日からですが、撮影できたのは8月6日の早朝です。

雛はふ化から一ヵ月以上が経過しており、抱雛はほとんど行われない時期です。

冷え込んだこの日の朝の5時11分、散らばって採食していた雛が雌親の許に集まりだし、12羽の雛の抱雛が始まりました(写真。1・動画1)。

写真1:孵化後1ヶ月を経過した12羽の雛を抱雛する雌。雛には放鳥時に装着した色足環が装着され、個体識別がされている。
動画1:12羽の雛を抱雛する那須どうぶつ王国生まれの1歳メス親

体が大きくなった雛12羽は、母親のお腹の下には入りきれません。多くの雛は頭だけを母親の羽の下に突っ込んだ状態の抱雛です。15分後、母親の腹の下に入りきれなく、抱雛を諦めた雛7羽は雌親の周りに集まっているだけの状態となりました(写真2)。

写真2:12羽の雛全員は雌親のお腹の下に入りきれず、抱雛を途中で諦めた雛7羽は、雌親の周りに集まっているだけの状態となりました。

日本のライチョウが産む卵の数は最高8卵ですので、雌が抱雛する雛数は多くても8羽です。今回のように他の雌の家族の雛も受け入れて抱雛することは、自然状態では稀です。その上今回のように孵化して一ヵ月が経過し、抱雛が行われることが少なくなった時期に、大きくなった雛12羽を雌が抱雛する光景は滅多に見ることのできない貴重な記録です。